電子帳簿保存法の主な内容と求められる対応

新しい税制や動向

電子帳簿保存法とは

電子帳簿保存法は、納税者が国税関係帳簿書類を保存する際の負担を軽くするために、電子データによる保存等を容認することを一つの目的として作られた法律です。

負担を軽くすることを意図しつつも、パソコン等による電子データの処理は、紙面等に比較して、痕跡を残さずに記録を遡って訂正をすることが容易であることからも、適正で公平な課税の確保に必要な条件整備を行うために、一定のルールが定められています。

特に、2024年現在では既に収まっていますが、2020年に始まった新型コロナウイルス感染症の影響により、企業のテレワークやペーパーレス化の推進は以前と比べてかなり進んできています。

このような背景からも、電子帳簿保存法について義務化の部分だけでなく容認の部分も含めて積極的にその内容を理解し、可能な範囲で取り入れていくことも一つと考えられます。

電子帳簿保存法の3つの区分

電子帳簿等保存

パソコン等で最初から作成している帳簿(総勘定元帳や現金出納帳、仕訳帳、補助簿など)や決算関係書類(貸借対照表や損益計算書、棚卸表など)は、プリントアウトして保存するのでなく、電子データのままで保存ができます。

こちらは、現時点では義務化されているわけではなく、希望者に新たな保存方法の選択肢を与えている位置付けとなります。

スキャナ保存

請求書の授受

契約書や見積書、注文書、請求書など、①取引相手から紙で受け取った書類や、②自身が手書きなどで作成して取引相手に紙で渡す書類の写しは、一定の要件に従うことで、書類自体を保存する代わりに、スマホやスキャナで読み取った電子データを保存することができます。

こちらも、電子帳簿等保存と同じく、現時点では義務化されているわけではなく、希望者に新たな保存方法の選択肢を与えている位置付けとなります。

電子取引データ保存

請求書、領収書、契約書、見積書などに関する電子データを送付したり、受領した場合(電子取引の場合)には、その電子データを一定の要件に従った形で保存することが必要です。

こちらは、上記の2つと異なり、2024年1月1日以降に行う電子取引について、義務化されています。

令和5年(2023年)12月31日までに行う電子取引については、電子データの保存ではなく、電子データをプリントアウトしたものを保存しておけば良かったのですが、これが2024年1月から適用される改正電子帳簿保存法によって義務化されたものとなります。

電子取引データの対象とは

基本的な考え方

注文書や契約書、送り状、領収書、見積書、請求書など、紙でやり取りしていた場合に保存が必要な書類に相当する電子データをやり取りしていた場合が対象となります。

電子データのやり取りについては、受け取った場合だけでなく、送った場合も対象となります。

なお、あくまでも電子データでやり取りしていたものが対象であって、紙でやり取りしていたものをデータ化しなければならないわけではありません。

具体的な対象例

例えば以下は電子取引に該当します

・電子メールで請求書や領収等のデータを受領

・インターネットのホームページからダウンロードした請求書や領収のデータまたは、ホームページ上に表示される請求書や領収書等の画面印刷を利用

・電子請求書や電子領収書の授受にクラウドサービスを利用

・スマホアプリで決済を行い、アプリ提供事業者から利用明細等を受領

・請求書や領収書等のデータをDVD等の記録媒体を介して受領

電子取引データの保存ルール

電子取引データの保存ルールとしては、3つのポイントがあります。

簡単に言うと、真実性の確保のために①改ざん防止のための措置をとる必要があり、可視性の確保のために、②「日付・金額・取引先」で検索できることと、③ディスプレイやプリンタ等を備え付ける必要があります。

改ざん防止のための措置

システム費用をかける方法を選択できる場合には、タイムスタンプを付与する(電磁的なタイムスタンプを付与できるシステムを導入した上で)方法のほか、訂正・削除の履歴の残るシステム等での電子取引データの授受・保存を行う方法があります。

但し、これらの方法を行うためには多額のシステム費用がかかることから、システム費用をかけずに導入できる方法として、改ざん防止のための事務処理規定を社内で定めた上で、これを運用することで改ざんがされることを防ぐ方法も用意されています。

特に、電子取引データ保存は、任意ではなく2024年1月以降の取引について全ての法人を対象として義務化されるものであることから、まずは導入が容易な方法により最低限の対応を行うことは現実的であり合理的とも思われます。

「日付・金額・取引先」で検索

こちらについてもシステム費用をかけることができる場合には、専用のシステムを導入することが考えられます。

一方、システム費用をかけずに対応する方法ですが、2つの方法が提示されています。

1つ目は、表計算ソフト等で索引簿を作成する方法です。たとえば、エクセル等のソフトを使い、通し番号欄、日付欄、金額欄、取引先欄、備考欄を横軸に設定して、縦にリストのように記録をすることで索引簿として管理し、検索に対応できます。

2つ目は、データのファイル名に、日付や金額、取引先の情報を規則的に入力するようにして、そのファイルを特定のフォルダに集めて保存しておくことです。フォルダの検索機能を使って、検索に対応ができます。

検索要件が特別に免除される場合

2課税年度前の売上高が5,000万円以下の方は、調査官からの電子取引データのダウンロードの求めに応じることができるようにしていれば、上記の検索要件が免除されます。

同様に、電子取引データをプリントアウトして日付及び取引先ごとに整理されている方も、調査官からの電子取引データのダウンロードの求めに応じることができるようにしていれば、上記の検索要件が免除されます。

対応が間に合わない場合の猶予措置

電子取引データの保存は上記のとおり、2024年1月以降の電子取引について義務化されていますが、人手が足りなくて準備が間に合わないなどの一定の場合については、これを緩和する措置があります。

以下の条件を満たす場合には、電子取引データを保存しておくだけで良いとされています。

①電子取引データ保存の一定のルールに従って電子取引データを保存することができなかったことについて、所轄税務署長が相当の理由があると認める場合(人手不足など含む)

②税務調査の際に、電子取引データのダウンロードの求め、電子取引データをプリントアウトして書面の提示・提出の求め、のそれぞれに応じることができるようにしている場合

参考)国税庁による電子帳簿保存法Q&A

国税庁のウェブサイトでは、電子帳簿保存法に関するQ&Aを確認することができます。

電子帳簿・電子書類関係、スキャナ保存関係、電子取引関係、都それぞれに分けて一問一答が取りまとめられていますので(国税庁 電子帳簿保存法一問一答(Q&A))、具体的なケース等を確認したい場合には、ぜひご参照いただけると良いかと思います。→

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