法人で交際費を扱う際の注意点

節税

交際費の範囲を間違えると損をする

法人で経費を使えば、法人税の対象となる利益(課税所得)を引き下げることになるのが基本です。

その結果、法人が負担することになる法人税が低くなるというのが一般的な流れです。

但し、法人が経費を使っても、ただ資金と表面上の利益が減るだけで、法人税が減らないことになったら、どうでしょうか?

最悪ですね。会社にとっても経営者にとっても、何も良いことがなくなります。

いわゆる「交際費」としても世間一般が考えられている範囲の費用は、特に、法人税の申告においては、上記のような扱いが分かれるものが沢山含まれています。

このため、感覚的に「交際費」と思っていた範囲が、法人税においてどのような扱いとなっているか一緒に考えていきましょう。

法人税の申告における「交際費」

法人税法の「交際費等」

法律

法人税法では、「交際費等」として、以下のように説明がされています。

1)交際費、接待費、機密費、その他の費用で、
2)法人が得意先、仕入先、その他事業に関係のある者等に対して行う、接待、供応、慰安、贈答、その他これらに類する行為のために支出するものであり、
3)但し、別途特に定められた一定のものを除くもの

少しわかりづらいと思いますので、解説していきますね。

「交際費等」の範囲が重要な理由

法人税法で特に、「交際費等」の範囲が重要なのは、通常の経費と違い「交際費等」について、法人税を引き下げる効果が、一部制限を受けるためです。

決算書でどの科目で処理しようが、実態によって判定される

そして、決算書上で「交際費」の科目で計上されていようが、他の科目に含めて表面上わかりにくくされていようが、その実態にそって「交際費等」の額を判断する必要があります。

そもそも法人の費用でなければ、交際費にすらならない

交際費等に該当するものの具体的な性質を見ていく前に、大前提があります。

そもそも法人の費用ではないもの、例えば、単純にオーナー経営者の個人的な支出で、法人の事業に関係しないものなどは、決算書に費用として計上することもできません。

法人の費用でない以上は、法人税を引き下げる効果は、全くありません。「交際費等」が一部制限を受けるといったレベルどころではなく、そもそも、効果はゼロです。

どのような内容であれば「交際費等」に該当するか

接待飲食

それでは、会社の経費のうち、どのような内容であれば「交際費等」に該当するかを見ていきましょう。

まず、得意先や仕入先など、いわゆる会社の取引先との関係で発生する経費が対象です。会社のうちわで行われる、従業員の懇親会や、役員員間の会食などは「交際費等」には該当しません。

例えば、取引先との関係を良好なものにするために開催した会食時の費用、取引先の担当者との関係を深めるために営業担当者がゴルフへ招待した際に会社が負担したゴルフ費用、などが「交際費等」に該当することになります。

上記の費用については、飲食代、飲食後に渡したお土産代、ゴルフプレー代金、交通費などもセットで認識されることになります。

「交際費等」に該当した場合の影響

年間800万円の枠

「交際費等」に該当する場合、一定の中小企業については特例として、年間800万円までの範囲で、法人税計算上の経費として扱うことが可能です。いわゆる「損金算入」できるというものです。

一定の中小企業については、いくつか細かく法令で定められているものがありますが、基本的には資本金1億円以下で、かつ、資本金の大きな一定の大企業の子会社となっていないものが該当するとお考えください。

1人あたり接待飲食代の基準(令和6年度-税制改正)

複数で飲食

また、「交際費等」のうちの接待飲食代については、1人あたり一定金額以下であれば「交際費等」から除外して、制限を受けないことができます。

税制改正により1人あたり10,000円の基準に

具体的な金額については、今までは1人あたり5,000円以下の飲食代とされていましたが、令和6年度の税制改正により、2024/4/1以降では、1人あたり10,000円以下の飲食代と変更されます。

税制改正により、制限を受ける飲食代の範囲が減ることになりますので、1人あたり5,000円超1万円以下の接待飲食費を使う会社にとっては、今までよりも法人税を節約できる可能性が高まることになりますね。

書類保存要件

但し、上記の優遇を受けるためには、①飲食等があった年月日、②参加した得意先、仕入先、その他事業に関係のある者等の氏名または名称とその関係、③参加人数、④その費用の金額、⑤飲食店・料理店等の名称と所在地、⑥その他参考となる事項、を記載した書類等を保存する必要があるとされています。

これらの書類保存をしていなければ、上記優遇を受けることができませんのでご留意ください。

接待飲食費の50%を損金算入できる

さらに、上記で1人あたり接待飲食代の金額が一定額を超えているものについても、接待飲食代の50%は損金算入することができるというルールもあります。

こちらのルールは、上記の中小企業(資本金1億円以下等の要件を満たすもの)以外の法人でも、資本金が100億円を超える法人(グループ通算制度を適用している場合に通算グループ内でいずれかの法人が100億円を超える場合を含む)でなければ適用ができます。

このため、資本金が1億円を超える場合にも適用できる余地があります。

なお、上記の中小企業の場合には、こちらのルールと、上記の800万円の枠による損金算入の特例とで、いずれかを法人が選択することになります。

法人の選択は事業年度ごとに行うことができますので、事業年度ごとに、いずれか法人にとって有利な方を選択することが合理的です。

法人税法上の接待交際費と間違えやすいもの

社内飲食費

例えば、自社の従業員の間で開催される食事会の費用については、社内飲食費に該当し、交際費に該当しません。

福利厚生費となるもの

このような社内飲食費については、全従業員を対象に開催される忘年会での飲食代のようなものであれば、一般的に福利厚生費として、法人税の計算における経費として損金算入することが可能です。

従業員への給与とみなされるもの

また、一部の特定の従業員の間の飲食代の場合、全従業員を対象としていない等の理由から、福利厚生費としては認められないですが、その実質から、従業員への給与として従業員の所得税計算において課税対象として取り扱われる可能性が高いです。

但し、その場合にも、役員向けではなく従業員向けの給与であれば、法人税の計算においては、通常の人件費等の扱いと同様に、法人の経費として損金算入することはできます。

役員報酬とみなされるもの

役員向けの実質的な給与と認められる場合には、他の役員報酬と同様に、定期同額給与(毎月同額の役員報酬)や事前確定届出給与(事前に金額を決めて届出が必要)などの要件を満たしているかどうかで法人税の計算において損金算入できるかどうかが分かれますので注意が必要です。

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