法人設立後の源泉徴収〜納付期限に注意、納期の特例も忘れずに。

基本的な税務実務

源泉徴収の仕組みと義務

源泉徴収の仕組みと義務

源泉徴収とは

源泉徴収とは、簡単にいえば、給与や報酬等を支払う側が所得税の納付の代行をする仕組みです。

給与や報酬を支払う際に、あらかじめ所得税分を差し引いて支払います。

その上で、預かっていた所得税分を給与や報酬を受け取る者に代わり、まとめて納付するのです。

通常であれば後から給与や報酬を受け取る個人が税金を払うところですが、それだと一般の個人が税務申告をして納税をすることになり負担がかかります。

同時に、税務署側にとっても事務対応が増え、税金の徴収も手間ですし、税金の納付が進まない一般個人もいるかもしれません。

そこで、この源泉徴収の仕組みが考えられたと思われます。

源泉徴収の対象

源泉徴収の対象となる報酬等に範囲については、簡単にいうと以下の3つとなります。

・従業員や役員への給与等の支払い
・特定の個人事業者等(士業含む)への報酬・料金等の支払い
・利子や配当等の支払い

法人に対して業務委託費を支払う際には、源泉徴収は通常発生しません。

しかし、上記のように相手が個人の場合には、支払う側が支払う際に、税金分を引いて預かった上で納付することになります。

国や地方としても、確実に税金を徴収でき、まとめて徴収をしてもらうことで効率化が期待できます。

支払う側にとっては、源泉徴収をすることが義務付けられていますので、源泉徴収のし忘れには要注意です。

個人事業主の場合でも、従業員を雇い給与等を支払う場合には、一定の認められた場合を除き、源泉徴収義務が発生します。

一般的には、個人事業主のかたでも従業員を雇って拡大していく場合には法人化するケースも多いです。

このため、法人設立後にはじめて源泉徴収のやり方が気になったという方も多いのではないでしょうか。(参考記事 – 「法人化のメリットとデメリット」)

源泉所得税の計算方法

計算方法

従業員への給与にかかる源泉所得税の計算には、国税庁が発表する給与所得の源泉徴収税額表を使って税額を確認します。

個人へのデザイン料や講演料などの報酬は、支払い金額に所定の率を掛けて、源泉徴収すべき所得税額および復興特別所得税の額を計算します。

なお、報酬の支払い金額が、100万円を超える場合には、掛ける率が増加し、かつ率を掛けた後に加算する金額があります。

いずれにせよ国税庁の発表する最新の計算方法を確認して計算を行う必要があります。

源泉所得税の納付期限について

原則的な源泉所得税の納付期限

源泉所得税の原則的な納期限

法人等の支払う側が源泉徴収した所得税の納期限はどうなっているでしょう。

これは、原則、源泉徴収の対象となった給与や報酬等を支払った月の翌月10日となります。

例えば月末に給与や報酬等の支払いを行なった場合には、翌月の源泉所得税の納期限まではわずか10日しかありません。

このため、実務的には、かなりタイトなスケジュールとなっています。

この「10日」というのは、月初から10営業日ということではありません。

4月10日、5月10日といった毎月の「10日」にあたるため、月初に祝日があるゴールデンウィークなどの場合、あっという間です。

注意が必要ですね。

納付期限に納付できなかったら

納付期限に納付できなかったら

納付期限までに源泉徴収した所得税の納付ができない場合、どうなるでしょうか。

その場合、源泉徴収義務者はペナルティを受けます。

ペナルティは、不納付加算税、延滞税の2種類の罰金となります。

これらを元の要納付額に上乗せして納付する必要があります。

ですので納付期限を忘れたりして納付が遅れると無駄な出費につながってしまいます。

しっかりとスケジュールを管理して納期限内に納付するようにしたいですね。

「納期の特例」で納付をまとめられる場合がある

上記の原則に対して、納期の特例というものがあります。

給与の支給人員が常時10人未満の源泉徴収義務者に限り、納期の特例を申請することができます。

納期の特例の適用を受けると、どんなメリットがあるのでしょう。

適用を受けると、給与や退職手当、弁護士や税理士等の報酬や料金について、毎月でなく年に2回、まとまったタイミングで納付することができます。

この場合、対象となる分は、1月から6月に支払った分は、7月10日が納付期限です。

7月から12月に支払った分は、1月20日までが基本的に納付期限となります。

但し、特例の申請をしても、全ての源泉所得税が対象となるわけではない点に注意が必要です。

原稿料、デザイン料など一部の個人への報酬や配当にかかる源泉所得税などは対象外となります。

納期の特例の申請方法

納期の特例を申請する

この適用を受けるためには、「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を税務署に申請する必要があります。

注意点としては、申請してすぐに適用されるわけではないことです。

翌月に支払われる給与や一定の報酬から適用される点です。

翌月の納付分からではなく、翌月に支払われる給与等からとなります。

ですので、原則適用の場合の翌々月の納付分からの適用となります。

申請後、適用開始時期との関係 例

3月中に申請した場合を考えてみましょう。

3月中の給与支給→4月10日(原則適用)までに源泉所得税を納付する必要があります。

4月中の給与支給→7月10日(特例適用)までに源泉所得税を納付する必要があります。

会社設立時に申請した場合

会社を3月中に設立し、その3月中に納期の特例を申請した場合はどうでしょうか。

3月中の給与支給→4月10日(原則適用)までに源泉所得税を納付する必要があります。

4月中の給与支給→7月10日(特例適用)までに源泉所得税を納付する必要があります。

結果、会社設立時だからといって変わりはありません。

あくまでも申請の翌月支給給与分の源泉税を翌々月に納付する際から適用されます。

それまでの分は原則の期限が適用されることになりす。

途中で適用要件から外れた場合

従業者が増えて要件から外れたとき

但し、適用申請時に給与の支給人員が常時10人未満であっても、その後10人以上となった場合、特例を使えなくなります。

この点も注意が必要です。

その場合、「源泉所得税の納期の特例の要件に該当しなくなったことの届出書」を税務署に提出する必要があります。

3月中に届け出した場合はどうでしょう。

1〜2月支給給与支払い→4月10日(届出の翌月)までに源泉所得税納付します。

3月以降給与支払い→翌月10日までに源泉所得税納付が必要です。

給与の支給人員が常時10人未満とは

例えば建設業などの日雇い従業員の雇用が常態化している場合においては注意が必要です。

常勤の従業員が8名だが、日雇い従業員を加えると10人以上になる場合、常時10人未満の要件を満たさないと判定されます。

所得税法基本通達216-1において、「給与の支払を受ける者の数が平常の状態において10人未満であるかどうかにより判定する」とされています。

このため、日雇い従業員が平常時からいるのが通常であれば、この数も計算に含めて判断することになります。

すなわち、常時10人未満とは認められないことになります。

逆に日雇い従業員を雇うことが平常時にはない場合はどうでしょうか?

特定のタイミングでのみ臨時的に日雇い従業員を繁忙期対応などで雇う場合には、日雇い従業員をカウントしない状況で10人未満か否か?で判断することになります。

詳細は税理士に相談するのが確実

税理士と相談

いかがだったでしょうか。

源泉徴収は上記の通り納期の特例も活用することで、事務対応を省力化することが可能ですのでぜひ活用したいですよね。

ただし、納期の特例の対象として認められる範囲かどうか?

申請をした場合にもいつから適用されるか?

・・・これらは意外と難しい部分がありますので、信頼できる税理士に相談して進められるのをオススメします。

(一旦、上記は2024/5/4時点の情報をもとに記載をしております)

これらをヒントとしつつも詳細な対応についてはぜひ慎重に税理士とも相談の上、最新の情報も確認のうえ、ご検討ください。

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