事業所税〜納税や申告が必要となるケースを解説

基本的な税務実務

事業所税とは

事業所の従業者

事業所税の目的と概要

事業所税とは、大都市の都市環境の整備・改善に関する事業に要する費用に充てるために課税されるものです。

事業所税では、基本的に、事業所の床面積や従業者の給与総額を基準として課税が行われます。

なお、ここでいう「事業所」とは、事務所や店舗、工場、倉庫などが該当します。

これらは、法人や個人が所有して使用しているものだけでなく、借りて使用しているものも含まれます。

特定の市区で限定して課税される

そして、事業所税は日本の全ての市町村で課税されているものではなく、特定の市区に限定して課税されている税金です。

東京都や政令指定都市、人口30万人以上の政令で指定する市、などを対象都市としています。

このため、日本の全ての市町村で課税はされないものの、人口の多いエリアはかなりカバーされています。

結果的に、多くの主要な地域で課税がされていると考えて良いでしょう。

事業所税の申告納付期限

事業所税の対象となる法人は、事業年度終了の日から2ヶ月以内に、事業所税の申告を行い、その上で納付を行う必要があります。

個人の場合は、事業を行った翌年の3月15日までに、事業所税の申告を行い、その上で納付を行う必要があります。

なお、事業所税については、事業税や法人住民税のような、申告期限の延長制度はありません。

事業所税申告の対象となる法人や個人

申告が必要な3つのパターン

事業所税の申告書の提出が必要なのは、以下の3つのケースです。

・事業所床面積の合計が800平方メートルを超える場合、

・従業者数の合計が80人を超える場合、

・前事業年度に事業所税の税額があった場合

これらの場合に、事業所税の申告書の提出が必要となります。

判定の単位

上記の判定の単位ですが、たとえば、大阪市の場合は、大阪市内の事業所等の合計について上記の基準を超えるかどうかで判断されます。

これに対して、東京23区の場合には、23区内全域の事業所等の合計で基準を超えるかどうか判断することになります。

判定のタイミング

なお、これらの判定は、法人の場合は、事業年度末日の現況、個人の場合は、12月31日の現況によって行われます。

仮に事業所税の納税義務が発生しない場合(税額が0)であっても、上記に該当する場合には、事業所税の申告が必要となります(免税点以下申告)。

事業所税の納税義務が発生する法人や個人

基本的な考え方

事業所等において事業を行う法人または個人に対して、以下の場合に事業所税が発生します。

・事業所床面積の合計が1,000平方メートルを超える場合、

・もしくは、従業者数の合計が100人を超える場合

上記の判定の単位は、申告対象の判定の際と同じです。

たとえば大阪市の場合は、大阪市内の事業所等の合計で、東京23区の場合は、23区内全域の事業所等の合計で、判定されます。

資産割と従業者割

なお、事業所床面積の合計が1,000平方メートル(免税点)を超える場合には事業所税の「資産割」が発生します。

また、従業者数の合計が100人(免税点)を超える場合は事業所税の「従業者割」が発生します。

このため、資産割か従業者割のいずれか一方だけが基準(免税点)を超え、もう一方が基準(免税点)を超えない場合には、基準を超える片方についてだけ単独で申告納付が必要となります。

判定のタイミング

これらの判定は、課税標準の算定期間の末日の現況により行われます。

但し、課税標準の算定期間中を通じて、従業者の数に著しい変動がある一定の事業所等については、特殊な計算が必要となる場合があります。

特殊関係者が同一の家屋で事業を行っている場合

法人や個人にとっての特殊関係者がいて、その特殊関係者と同一の家屋で事業を行っている場合、その特殊関係者の行う事業は共同事業とみなされます。

その結果、原則、納税義務(免税点)の判定は、共同事業を合算して行うことになります。

実際に納めるべき事業所税の金額の計算においては、床面積や給与総額は切り分けて行います。

しかし、納税義務(免税点)の判定だけ合算して行うため、納税義務が発生しやすいので注意が必要です。

なお、ここでいう「特殊関係者」とは、親族その他の特殊の関係にある個人または同族会社とされています。

※特殊関係者の詳細な定義の説明を行うとかなり複雑なお話になるため、一旦、説明省略します。ここでは概要を把握いただければ幸いです。

貸ビル等における納税義務者

貸ビル等の全部または一部を賃借して事業を行う場合、賃借して事業を行う方が事業所税の納税義務者となります。

逆に、貸ビル等の貸主は、その貸付部分については納税義務者とはなりません。

また、テナントなどの空室部分も課税対象とならないとされています。

但し、これらの状況を把握するため、貸ビル等の貸主の方は、貸付先や空室状況などを申告する必要があります。

事業所税の計算方法

事業所税の計算式

事業所税の計算は、基本的には、以下のような計算式で行います。

資産割額=(事業所床面積ーそのうち非課税分ー課税標準の特例)✖️600円

従業者割額=(従業者給与総額ーそのうち非課税分ー課税標準の特例)✖️0.25%

非課税分とは

事業所税の課税の趣旨及び目的を勘案し、一定の非課税措置が設けられています。

上記の算式において、資産割や従業者割の計算上、非課税分を差し引いて計算することができます。

たとえば、保養所、食堂、売店、体育館など、事業主が従業員等の慰安、娯楽等の便宜を図るために常時設けている施設で直接事業の用に供されていないものは、「福利厚生施設」として、非課税対象施設とされています。

また、一定の基準を満たす、消防用設備等、特殊消防用設備等及び防災施設等も、非課税対象施設となります。

なお、実際の課税額の計算時だけでなく、納税義務(免税点)の判定においても、これらの非課税対象施設の床面積は含めずに判定します。

課税標準の特例とは

課税標準の特例とは、非課税措置と同じく、事業所税の課税の趣旨及び目的から、事業所税の軽減を図るために設けられたものです。

但し、こちらは非課税措置と異なり、そのもの全てが控除対象となるのではなく、一定の割合が控除対象となります。

たとえば、倉庫業者の営業用倉庫のうち一定のものは、その3/4が、資産割の計算において控除されます。

また、ホテル・旅館用施設のうち一定のものは、その1/2が、資産割の計算において控除されます。

なお、納税義務(免税点)の判定においては、これらの課税標準の特例が適用される前の事業所床面積により判定します。

この点も非課税対象施設と扱いが異なりますので注意が必要です。

その他、従業者割の対象とならない給与

従業者割の計算において、従業者給与総額には以下のものは含まれませんので注意が必要です。

・退職給与金、年金、恩給等

・障害者のうち一定の者(役員を除く)

・年齢65歳以上の者(役員を除く)

期間の中途で改廃された事業所等

原則は、前述のとおり、課税標準期間の算定期間の末日時点の事業所床面積が、資産割の課税標準とされます。

但し、課税標準の算定期間の中途において新設された事業所等や、廃止された事業所等、及び、新設されて廃止された事業所等については、その限りではありません。

課税標準の算定期間のうち新設されてからの期間や廃止されるまでの期間を考慮した一定の計算により、算定を行うことになります。

まとめ

いかがだったでしょうか。事業所税は、事業所床面積あるいは従業者数が一定のサイズを超えた時に申告や納税が必要となるものです。

さらに、特定の市区に事業所をもつ法人や個人のみが対象となりますので、申告や納税の対象とならない場合も十分あります。

但し、最初は対象外でも、事業の規模が大きくなってきたタイミングで、申告や納税が必要となることも十分考えられますので、事業の成長の際にはぜひご注意いただければと思います。

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