事業計画に使える損益モデルとは?間違えやすいポイントを解説

事業計画に使える損益モデルの作り方 財務/経営管理コラム

事業計画を作り、計画PLを作る際に、その数値がただの理想であって実際のビジネスからズレてしまっていては意味がありません。

かといってただ保守的な数字であれば良いと言うものでもありません。

大切のなのは、事業計画が実際のビジネスの構造に沿って実際のアクションへのつながりが見えてくるような構造とすることです。

そのように計画を作っていくことをモデリングとも言い、損益をモデル化するとも言います。

今回はこの損益のモデル化により、事業計画の数値が経営アクションにストレートにつながるような構造をご説明していきます。

損益のモデル化で精神論の経営から科学的な経営へ

損益のモデル化で精神論の経営から科学的な経営へ

なぜ、損益のモデル化が必要?

なぜ損益モデルを作ることが、事業計画につながるのか?

まずは、数値と行動を繋げやすいということ。

そして、その関係を皆で共有して確認しやすいということでしょうか。

例えば、売上高を今期は2,000万円だったけど、来期は3,000万円にしたい!と思ったとします。

その時に、ただ、その通りに来期の売上高を3,000万円として事業計画に記載したところで、

そこからは何も来期に目標とすべきアクションは見えてきません。

感覚的な振り返りになっていないか

また、来期になって、実際には売上高は2,400万円にしか伸びなかったとします。

その時に、予算と実績の比較として3,000万円に対して2,400万円と記載したところで、どんな振り返りになるでしょうか。

うーん、頑張りが足りなかったか・・・

気合いが足りなかったのか・・・

自分に甘すぎたのか・・・

今年は、日本の景気が悪かったから、そのせいだろうか。。

・・・確かにそうかもしれないのですが。

それでは、現実的な振り返りにはならないですよね。

次に改善すべきエリアも見えてこないのではないでしょうか?

営業プロセスを数値化して「見える化」する

営業プロセスを数値化して「見える化」する

経営者や営業マンの方の頭の中にあるコツやポイント

経営者の方や、営業マンの方であれば、

売上高を伸ばすためのコツやポイントなどご自身の中で色々と練り上げたものがあったり、

自信のあるものがあると思います。

ですので、ご自身の頭の中では、売上高3,000万円を達成するための方程式のようなものが実際にはあるのだと思います。

これは、明確に意識して表現できなかたっとしても、感覚的に、または潜在意識的に持たれているでしょうか。

頭の中をモデルで表現する

その営業の最前線に立っているあなたしか知らない売上高を作る方程式

これを、事業計画に損益モデルのように表現できたら・・・それが一番、理想的です。

もちろん、そんなことどうやってやるんだよ・・・

複雑になりすぎて、表現できないじゃないか・・・

という声もあると思いますので、そこは少し調整が必要なのですが。

売上高を分解してモデル化する

売上高を分解してモデル化する

売上高の分解

損益モデルを作る第一歩として、売上高の分解があります。

そして、売上高の分解としては、教科書的には、それらしい分解が沢山あります。


例えば、

・顧客数✖️客単価=売上高
・製品単価✖️製品販売数=売上高

これを事業別に組み合わせると

・A事業売上高(顧客数✖️客単価)+B事業売上高(製品単価✖️製品販売数)=会社売上高

こんな分解の例が考えられるでしょうか。

もちろん、ただ単純に、財務数値の売上高の3,000万円と2,500万円の比較だけを並べているよりは、良くなっています。

計画や予算も分解して実績とぶつける

まずは、事業計画や予算の売上高を、顧客数✖️客単価、製品単価✖️製品販売数で、見積もっておきます。

その上で、実績数値が上がってきた時に、実績売上高を同じように分解して、比較したら、色々なヒントが見えるかもしれません。

例えば、今期の実績は、顧客数500人✖️客単価5万円=2,500万円 だとします。

これに対して、計画は、顧客数550人✖️客単価5.5万円=3,025万円 だとします。

そうすると、

実績が計画を下回っていた理由(分解)は、顧客数が50人足りず、客単価が5千円届かなかったから、・・・

というところまで見えます。

ヒントになるかもしれません。

但し、経営者や営業最前線の方の頭の中の売上の構造が、このような教科書的な分解とつながるものなのか?

注意が必要です。

こんな事業計画のモデル構造は間違えている

こんな事業計画のモデル構造は間違えている

先ほどの例では、A事業の売上高をこんなふうに簡単に示しました。

顧客数✖️客単価=A事業売上高

このモデルでも、先ほどお話ししたように、分解しないよりは確実に前には進んでいます。

ですが、問題も含んでいます

一つ目の問題点。方針が見えない

売上高が足りなかった際の改善アクションを考える際に、上記のモデルからは何が出てくるでしょうか。

一つは、顧客数を増やすこと、もう一つは、客単価を上げることですよね。

まず一番目の問題は、このモデルだけでは方針が定まらないことです。

顧客数を伸ばすべきか?

客単価を伸ばすべきか?

はたまた、どちらかを少し下げてでも、もう片方を圧倒的に伸ばすべきか?

本当は、市場環境を見て、経営者の頭の中では方針があったとしても、それがモデル上には表現されていません。

あくまでも実績を分解して収益の構造を理解するという分には良いのです。

しかし、アクションに繋げるために、これを見せることが、何につながるのか?

というと少し微妙です。

ビジネスの実態が事業計画モデルと合っていない

ビジネスの実態が事業計画モデルと合っていない

次の2つ目の問題点は、

そもそも実際の構造と異なるかもしれない

・・・ということです。読み違え、とも言えるでしょうか。

確かに、A事業は客商売で、客単価も計算できます。

しかし、実際には、顧客のうち少数の固定客が売上高の8割程度を占め、客単価が高い商品を購入しています。

そして、残りの2割の新規顧客には安価な商品を購入する傾向がある、としましょう。

そうした場合、これを強引に一つの式で、

全体顧客数✖️全体客単価

で表現してしまっても、実際のところが見えてきません。

また、実際には、客数がキーとなるのではなく、販売キャンペーンや販売会の実施回数がキーだったということもあり得ます。

その場合、

販売キャンペーンの数✖️キャンペーン当たり売上高=A事業売上高、

・・・とモデルを修正して、

その枠組みで、計画を立て直し、実績との比較をした方が良いかもしれません。

固定費と変動費に分解する(固変分解)際の注意点

固定費と変動費に分解する(固変分解)際の注意点

売上高の次に、原価や経費といったコストのモデル化についても考えてみましょう。

その際に、よく出てくるのが、固定費と変動費を分解しましょう、というものです。

費用を固定費と変動費に分けることで、損益分岐点、つまりどれくらい売上高を稼いだら利益が出るか、がわかるということです。

ですが、これも、経営者や営業の最前線に立っている方の視点を入れずに、ただ教科書的に作ってしまうと失敗します。

例えば、

固定費はなんだろうな・・・

そうだな、事務所家賃や、人件費、減価償却費あたりが一般的に固定費となるらしい。

それではそうしよう。

残りは自動的に、変動費だな・・・

・・・という感じで進めてしまうケースです。

いかがでしょうか。

ここには、事業計画を作る上で、陥りがちなミスがあります。

固定費の表現に引っ張られすぎる

費用や経費を固定費と変動費に分解する際に陥りがちなのは、「固定費」という表現に引っ張られすぎることです。

つまり、固定的に発生しそうなものを固定費にして、残りを全て変動費にすることです。

例えば、事業計画を立てるにあたって、

シンプルに、固定費は横一線、変動費は売上高✖️変動費比率で計算したとします。

その場合、どういった結果となるでしょう。

結果、固定的には発生しないけど売上高には全く連動しないような費用・経費が、おかしいことになります。

これが、さも売上高に連動するかのように計算されてしまいます。

解決方法その1

これを避けるにはどうしたら良いでしょう?

もちろん、あまり細かく作りすぎると、かえって実際に使うことが難しくなってしまいます。

解決策としていくつか考えてみましょう。

変動費には売上高が増加した際に連動して増加しそうな項目を入れるようにする。

その上で、それ以外のものは固定費として割り切ってカテゴライズしてしまう。

これが一つです。

解決方法その2

もう少し進化させると、変動費のうち売上高に連動する物と、それ以外のものに連動するものを切り分けてシミュレーションする。

これもできると良いです。

例えば、販売時にエージェントに支払う手数料は、販売額に比例する仕組みだから、売上高に連動させる。

一方、運送費は、売上高の構成要素である、販売台数に連動するようにモデルを設計する。

・・・というような方法です。

売上高の計画を、そもそも販売台数✖️製品単価と分解して計画設定しているのであれば、その販売台数の推移データに1台当たり運送費を掛けることで、運送費の計画値を計算することができますね。

まとめ

事業計画に使える損益モデルのまとめ

いかがだったでしょうか。

本当は、事業計画の作り方について他にも色々お話ししたいことはあるのですが・・・。

今回は入り口の考え方のところをお話しさせていただきました。

年次や月次の実績モニタリングにも

事業計画を作る際に役立つだけでなく、年次や月次の実績をモニタリングしていく際にも役立つことを期待しています。

特に、モデル構造で数値化しておくことで、そこから先のディスカッションがしやすくなるというメリットがあります。

完全に細かく全てを数値化するとむしろ複雑になって、見にくくなってしまうので、その点は注意です。

このため、ある程度、実態に近い形で大きなところをモデル化して数値として見えるようにできると良いでしょう。

そうできると、その後の、アイデアだしや振り返りが、もっとスムースで意味のある形になると思います。

諦めていたことができるようになる

経営者の方の中には、そういった経営視点の分解は自分の頭の中でやっているから十分だという方もいらっしゃると思います。

数値の集計などは、決算書だけ見て、そこには経営視点は期待していないなど。。

これが、意味のある形で経営視点で数値を分解して見えるようにできたら、感覚が変わるかもしれません。

また、このような視点でモニタリングをして改善していくことが、結果的に、継続的な利益を確保に繋がり、財務を強化することにも繋がります。

なお、業績評価に関連したお話としては、事業別や部門別の業績管理についても記事をあげています。

そちらも、ぜひご覧ください。

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