間違った「節税」でなく、会社を伸ばす適切な節税を!

法人や個人事業主にとっての節税

節税とは、文字通り税金を節約するという意味の言葉ですが、法人や個人事業主の方にとって意外と誤解をされているかたがいるかもしれません。

節税は脱税とは全く異なるものです。節税は、あくまでも税法の中で認められる範囲において、法人や個人事業主にかかる税金が無駄に大きくならないよう対策することです。

脱税は税法に反する形で違法に税金を小さくする行為ですが、節税は税法の範囲で認められる範囲で納税者として税金を抑制できる権利を最大限活用する方法だと言えるでしょう。

「税法の範囲で適切に対応することが大切ですよね」

間違った節税対策とは?

さて、同じ「節税」にも2種類の節税対策があるのをご存知でしょうか。

一つは会社を伸ばす節税対策で、もう一つは会社を伸ばさない節税対策です。

そして、間違えて、知らず知らずのうちに会社を伸ばさない節税方法を選んでしまっていたら大変です。

無駄に経費を使う節税策

会社を伸ばさない節税対策の代表的なものは、利益が出ないように単純に経費を増やして利益を減らすというものです。利益が残ったら税金がかかって勿体無いから使ってしまおうというものですね。

このような節税対策は、確かに税金は減りますが、同時に、税金を引いた後に会社に残る財産(税引後利益)も減らしてしまうのです。

これは非常にもったいないですし、これを積み重ねた会社は破滅に確実に近づいていっているとも言えるでしょう。特に、利益を減らすために本来必要のない無駄遣いで経費を使うことは、危険です。

経費で全て使えば何も残らない

仮に利益が残って課税がされても、約30-35%の法人税等がかかる迄であり残りの約65-70%は会社に残ります。経費で全ての利益を使ってしまったら100%何にも会社に残りません。

この誤った節税対策を繰り返せば、会社は常に薄氷の上を進むことになり、ちょっとした想定外のことが一つ起こっただけで倒産してしまうかもしれません。

「結局、無駄に経費を使うよりは利益を65%でも残す方が賢いですね」

会社を伸ばす節税方法とは

その逆に、会社を伸ばす節税方法があります。この節税方法では決して無駄な経費を浪費しません。

あくまでも会社に必要な経費や投資を今まで通りに行う中で、税金の優遇を受けられるような対応を行なっていくことです。

会社を伸ばす節税対策の例

役員社宅の制度で、役員は給与課税されない手取りを増やせる

例えば役員社宅の制度を導入すると、役員は会社が支払った家賃の一部の金額を負担するだけで良くなります。

ただ、実質的な給与と判断されて給与課税されないかが気になるかと思いますよね。

ここは、福利厚生制度として適切に設計できれば、福利厚生費の扱いで給与課税されずに実質手取りを増やす効果があります。

これは会社経営者を含む役員の個人所得税に効果のある節税対策と言えるでしょう。

詳細はこちら→「役員社宅は経費にして節税できる?福利厚生費とする役員社宅規程と計算」

出張旅費規定の導入で、日当を給与課税されずに受け取れる

また、出張旅費規定を適切に整備し運用することで、出張に際して従業員や役員へ日当を旅費交通費の位置付けで支払うことができます。

つまり給与扱いとはならないため、給与課税をされずに、実質手取りをこちらも増やす効果があります。

こちらは役員だけでなく従業員の方も含めた個人所得税に効果のある節税対策となります。

詳細はこちら→出張旅費規定で会社も個人も節税〜税務調査で課税されない対応とは

残業時の食事代についても規定を整備することで福利厚生費とできる

さらには、従業員の残業時の食事代や役員の通常の勤務時間外での食事代について、適切に規定を整備し運用することで、福利厚生費として取り扱うことができるようになります。

こちらも制度が無ければ給与の中で支払っていた食事代について給与課税されない福利厚生費として扱うことができる効果があります。

同じく個人所得税の節税対策となります。

詳細はこちら→残業食事代を税務上も福利厚生費とできる上限は?規定で節税するポイント

このように制度化して福利厚生費としてしっかり整理しておくことで節税することにつながるものがあります。

損金にできない経費を出さないこと

また、そもそも会社の法人税の税金計算等においては、会社の経費であっても、税金計算の基礎となる所得から差し引くことができない経費となることがあります。

いわゆる損金不算入の経費です。

どうしても避けられない損金不算入の項目である場合にはしょうがないです。

但し、単純によく税金のことを知らなかったり管理がずさんなだけで、本来、損金算入できるはずの経費が損金不算入となってしまったとしたらそれは勿体無いことです。

役員報酬は会社の損金にならないケースがある

例えば、役員報酬を期首の一定の期間以降も、毎月上げたり下げたりしていたら、定期同額給与の要件を満たさなくなり経費にできない役員報酬が発生することになります。

これも事前に役員報酬の課税のルールや定期同額給与の要件をしっかり理解していれば無駄な税金の増加は避けられたはずです。

詳細はこちら→「役員報酬の変更できるタイミングは?変更時期が税金にどう影響するか解説」

節税できる交際費と節税できない交際費がある

また、交際費については、中小企業では年間800万円までの範囲で経費として扱うことができますので、その範囲であれば使った交際費には損金として節税する効果が期待できます。

逆にその範囲を超えてしまったら、基本的には損金算入できないため節税効果がないことになります。

また、税制改正により、接待飲食代は1人あたり1万円以下であれば、税務上の交際費等から外すことができるようになりました。

以前は5千円だった基準が1万円に変わったことで今まで以上に、損金として節税できる範囲が広がっています。

詳細はこちら→「交際費〜節税ができる交際費の範囲は?1人当たり飲食費1万円基準はいつから?

このように税務上の要件をしっかり把握した上で、取りこぼしがないようにしていくことも、一つの節税方法とも言えるでしょう。

繰越欠損金もしっかり活用する

例えば法人で、青色申告書である法人税申告書を提出している場合、その事業年度において発生した税務上の欠損金額は繰越欠損金として、以降の事業年度で税務上の利益が発生した際に、所得と相殺する効果があります。

こちらもしっかりと欠損金を繰越しておいて、実際に黒字化して、活用できるタイミングになったときには忘れずに繰越欠損金の制度を使い、税金を節約していただければと思います。

なお、法人であれば、適切に処理された繰越欠損金について、10年間、繰越欠損金を繰越して課税所得から差し引くことができます。

節税できる経費を見落とさない

また、在庫の評価減や、貸倒引当金の繰入額、貸倒損失など、会計上は通常費用として計上するが、税務上は一定の要件を満たさないと税務上は経費として損金算入できないという場合があります。

これらについては、税務上、損金算入が認められる一定の要件に該当するか否かについて、適切に把握し、要件を満たすことになるタイミングを逃さずにしっかりと整理の上、損金算入することも大切です。

これも一つの節税対策と言えるでしょう。

「なるべく早い時期で損金にできた方が税金支払い面でゆとりができますね」

本来はもっと早いタイミングで税金計算上も経費として使えたはずなのに、数年経ってから、税務上の損金算入を行うことになってしまう場合はどうでしょうか。

その場合、後で払えたはずの税金をわざわざ前倒しで支払うことに変えてしまっているのと同様の影響が発生します。

税金を早い時期に減らすことができれば、単純にタイミングの問題だけだったとしても、会社の資金繰りにプラスの効果を与えることになります。

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